2011年2月20日日曜日

ギリシャだけではない問題国

【日曜経済講座】

 ■中国、不動産バブル インド、インフレ

 ニューヨークをはじめ世界の金融市場が「ギリシャ?ショック」に揺れているが、果たして新興国は大丈夫だろうか。代表格である中国とインドを比べると、中国は不動産バブルが膨張し、インドは深刻なインフレに見舞われている。両国とも中央銀行がマネーを大量発行しているためだ。

 両国の為替制度は、いわば、ドル本位制である。中国は人民元をドルにペッグ(くぎ付け)し、インドはルピーの対ドル相場を参考基準に比べ、上下10%程度の変動幅におさめている。

 ◆一見、素早い立ち直りだが

 2008年9月の「リーマン?ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金の供給量を平時の2倍に膨らませている。そこで中国、インドをはじめとする新興国の中央銀行は、安心して自国のマネーを発行してきた。一見すると、結果は大成功である。世界の新興国?地域の経済成長は、低迷する日米欧を横目にいち早く立ち直り、世界経済の牽引(けんいん)車と称賛されるまでになった。

 ◆外準増ペースでカネ発行

 中国とインドはどのくらい新たなマネーを発行しているのだろうか。両国ともドルをせっせと買い上げ、外貨準備としてドルを積み上げている。グラフをみると分かるように、外準の増加ペースにあわせておカネを発行していることは一目瞭然(りょうぜん)だ。

 発行といっても、輪転機で紙幣を刷るという意味だけではない。中央銀行は中央銀行券というお札を発行するだけでなく、自国の商業銀行の証券類を買い上げて、その資金を商業銀行が中央銀行に持つ当座預金口座に振り込んでいる。

 こうして中央銀行がつくりだすマネーは、「ベース?マネー」と呼ばれる。商業銀行による新たな融資や信用供与の「源泉」ともなり、個人や企業の経済活動を拡大させている。

 インドの外貨準備額をインドの通貨、ルピーに換算してみるとインドの中央銀行のベース?マネーの量は03年4月以降、絶えず外貨準備とほぼ同水準になっている。インドはドルを買い上げた分だけのマネーを国内の民間市場に流し込んでいるわけで、インドは通貨?金融政策を米国にぴったり同調させている。

 中国もインドと同じように、入ってくるドルの規模と足並みをそろえて人民元を発行している。インドと違うのは、「熱銭」と呼ばれる投機資金の規模が巨大な点である。

 厳しい資本の流出入規制を敷く中国だが、年間で二十数兆円分の投機資金が規制の網の目をくぐり抜けている。国有企業が香港の拠点などを通じ、海外でため込んだおカネを中国本土の不動産や株式市場に投入しているからだ。

 この熱銭と中央銀行が新たに供給するマネーが相まって中国の現預金総計は膨張を続け、国内総生産(GDP)の2倍近い。ドルに換算した中国マネーは、3月時点で米国より1兆ドルも上回っている。GDPで米国の3分の1強程度の中国が世界ナンバーワンの「マネー大国」に躍り出た格好だ。インドのマネー総量は同国のGDPの水準以下におさまっているのと比べても、中国はいかにも異常である。バブル化した人民元は上海、北京をはじめ主要都市の不動産市場の押し上げに一役買っている。

 ◆安定成長には供給抑制必要

 インドの場合、中国のような不動産バブルは起きておらず、主要都市の不動産価格もほとんど上がっていない。ところが、消費者物価は今年に入って前年比で15%前後も上昇を続けている。対照的に中国の物価は同2%程度に抑制されている。中国の消費者は、あふれるマネーをマンションなどの投資に回しているわけだ。

 こう考えると、中国もインドも安定した経済成長を続けるためにはマネーの供給を抑えるしかない。そのためには、外国為替制度を改める必要がある。

 自国通貨の対ドル相場の変動幅を広げることでドル買い介入する度合いを減らす。そして、自国通貨を刷る量を縮小していくしかない。(編集委員?田村秀男)

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